でこぼこよみもの

人生、山ばかりでも谷ばかりでもなく…という、とある夫婦の話

【50代からの認知症講座】やったこと、されたことは忘れるが、気持ちは残っている!~その1~

こんにちは。私は現在、現役のケアマネージャーとして日々自宅で生活している高齢者の方々の相談を受けて、介護サービスなどの調整をするお手伝いをさせていただいております。前回は認知症になると頭の中ではどういったことが起こっているのかを具体例を示してお伝えしました。今日から2回シリーズで認知症の物忘れの質とその具体策についてお伝えしていこうと思います。第1回目は認知症の物忘れはどういった質を持つものなのかということをお伝えしていきます。

 

今、親の介護をしている方で「最近、親に何度も同じことを言われたり夜なのに急に洗濯を始めたり、仕事に出かけようとしたり…」と明らかに様子が変わってきたと感じることはありませんか?

また、認知症になると物忘れがひどくなり、人の顔がわからなくなったり、勝手に外出して家に帰れなくなったり、しまいには周りの人にわけの分からないことばかり話すようになったり、暴言、暴力が見られるようになったり…とそういったイメージを持たれる方も多いと思います。

これらの現象は認知症になると起こりうることではありますが、現実的には必ずしもそうならないこともあります。高齢になると何か得体のしれないことが起こってしまいそうな恐怖心からか、近頃の健康番組などではことさら「認知症にならないための◯◯」といった類のものが多いような気がします。でも、認知症と一言でいっても様々なタイプがあり、必ずしも著しい記憶障害を伴わないものもありますので、 今日は認知症の中でも代表的なものの一つであるアルツハイマー型認知症の記憶障害を例にしてお話を進めていきます。

アルツハイマー型認知症の多くの方は記憶するのが難しくはなります。これを一言で申し上げると 

 

結論:やったこと、されたこと(体験)は忘れるが、気持ち(感情)は残っている!

 

なぜなら:頭の中で記憶が残っている場所がそもそも違うと考えられているからです。

 

えっ、そうなの?と思った方もいらっしゃると思いますが、これから徐々に説明させていただきますので、ご安心ください。

 

前回の記事でお伝えしましたが、単なる物忘れ(年相応の物忘れ)と認知症との決定的な違いは以下の通りです。

単なる物忘れ:食事のメニューは忘れても、食事をした行為自体は覚えている。

認知症の物忘れ:食事のメニューはもとより、食事をした行為自体も忘れている。  

 

数分前や数時間前のことが記憶できなくなるのが、アルツハイマー型認知症の症状の大きな特徴で、これを「短期記憶」の障害と言います。

 

dekoboko5050.hateblo.jp

 

なぜ、このようなことが起きるのでしょうか?

実際の頭の中を見て解説していきましょう。 

f:id:dekoboko5050:20191117142219p:plain

 

実はこれ私の頭部MRI画像です。昨年自費で脳ドックを受けてそこで撮影したものです。結果は「所見なし」でした。

この脳の中で記憶に携わる重要な器官が海馬と呼ばれる部位です。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/2/2e/Gray739-emphasizing-hippocampus.png/250px-Gray739-emphasizing-hippocampus.png

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
 
青い部分が海馬です。人間は目、鼻、耳などから様々な情報を得て、それが短期記憶として脳内に保管されます。その後、繰り返し記憶として覚えようとしたり、思い出したり、誰かにその内容を伝えたりするといった行為を通じてやがて長期記憶として大脳皮質に移り、そこで貯蔵されていくと言われています。
アルツハイマー型認知症とはその海馬の萎縮が原因で発症します。海馬が萎縮してしまうと新しいことを覚えるのが難しくなってきてしまうので、アルツハイマー型認知症の方はほんの数分前に伝えたことを覚えられないだけでなく、言葉自体やその持つ意味などの理解力が衰えているため、何度も聞き返してきたりその内容自体が分かってもらえないといったことが起こります。
かと思えば、それとは対照的に半世紀以上前のことは鮮明に思い出せたりもします。なぜなら、定着した過去の印象に残っている記憶の多くは、大脳皮質という海馬の上の方にある器官へと保管場所が移っていると考えられているからです。パソコンに例えるとハードディスクに保管していたメモリーがパソコン自体がクラッシュしても、インターネット内のクラウドに移って残っているといったイメージでしょうか。
また、感情の記憶はどこにどういった仕組みで保管されているかは明確には解っていないことも多いのですが、海馬以外の複数の部位でも保管されているのではないかと考えられています。
因みに海馬という名前はタツノオトシゴに形が似ているから命名されたと言われてます。個人的には明太子にも似ているような気がします。
 
 
 
 ーまとめー

アルツハイマー型認知症の方は…

結論:やったこと、されたこと(体験)は忘れるが、気持ち(感情)は残っている!

 

なぜなら:頭の中で記憶が残っている場所がそもそも違うと考えられているからです。

 
では、そういった方に対して具体的にどういった姿勢で関わればよろしいのでしょうか?それは次回その2で詳しくお伝えしていきます。
今日は認知症の物忘れはどういった質を持つものなのかということをお伝えしました。
 
それでは、その2までごきげんよう(^^)/